皆様こんにちは!八ヶ岳エリア担当の山田です。
私が務めるギャラリー庭園の桜は今が満開です。
標高は1120mで、このゴールデンウィーク前でも
日によっては朝の早い時間、蹲(つくばい)には
凍りが張っています。
COVID-19の感染拡大を受けての全国での緊急事態宣言と
このゴールデンウィーク期間の外出自粛と県外往来の
自粛要請をうけて、山梨県下では、富士北麓と八ヶ岳南麓の
観光施設・商業店舗に県知事から自粛要請の依頼がありました。
私自身は普段から集客を目的とした観光施設と云ってもいい、
ギャラリーを運営しており、顧客の大部分は、東京首都圏、
名古屋、京阪神エリアが占めている為、この期間の自粛対応に
苦慮するところであります。この非常事態に芸術や工芸の様な
分野は必要ないと切り捨て論も良く聞かれます。
特に多くの日本人にとっては、馴染みのないアートシーンは
投機の対象であったり、娯楽としての要素が強かったりします。
しかしながら一部では美術館や博物館に入館者が列をなす展示企画も
多くニュースの話題になる事も事実です。
今回は、私が美術を扱う経験から感じる事について
お伝えできればと思います。
よろしくお付き合いください。
ドイツ文化相の言葉
「クリエイティブな人々のクリエイティブな勇気は危機を
克服するために役に立つ」「私たちは未来の為に良きものを
創造する全ての機会をつかむべきで」「その為には、
アーティストは必要不可欠で特に今の状況下においては、
我々の生命維持に必要不可欠なのだ」この言葉は、新型コロナウイルスに
よる経済危機に対してドイツ連邦議会が発表した国民への
救済策発表の際、モニカ・グリュッタース文化相の言葉です。
ドイツの個人・自営の起業家は300万人を数えその内半数は文化・
芸術のカテゴリーで就労している。
「助成金を所得すれば返済義務はなく、失業保険を含む社会保障を
利用して 音楽家、画家、作家、映画・音楽関係者や書店、ギャラリー
出版社など誰もが生き残れることを望む」とグリュッタース文化相は
スピーチしました。 もちろん特定の業界だけでなく全産業への大規模
支援の中の一部ですが、イングランド芸術評議会の芸術分野への支援や
アメリカのメトロポリタンミュージアムの政府への支援依頼も規模が大きく
各国の芸術分野への理解と支援策を見ると、如何に人類にとって芸術とは
必要不可欠なものと認識しているかが分かります。
「芸術」とはいったい?
日本では、江戸後期から明治維新以降にかけて日本の教育界に尽力した
哲学者で教育家の西周(にし・あまね)1829年–1897年によって、
「liberal arts」リベラル・アーツと云う言葉を訳した語彙が「芸術」
となります。リベラルアーッとは簡単に言うとギリシャローマ時代の
人が身ににつける必要のある技芸「自由七科」の事で、音楽・天文学
・算術・幾何学・論理学・文法学・修辞学の七つの素養を云い。
現在は「一般教養」とひと言で表されています。欧米の大学で学ぶと
ユニバーシティではこのリベラル・アーツをフレッシュマン(一回生)
ソフォモア(2回生)で徹底的に叩き込まれます。この関門を越えないと
専門課程(ジュニア・シニア)には行けません。私が通った大学では、
一回・二回生の必須科目に社会学・哲学・リタリチャー(文学)・マス
(数学)・心理学・世界史・美術史他得意不得意関係なく科目選択させられ、
とにかく死に物狂いでした。未だに夢で単位を落とす悪夢を見る
事がある程トラウマです(笑)
しかしこの一般教養は素晴らしい課程で、全ての科目がお互い深く密接に
繋がりを持ち学生達に好奇心と探求心を奮い立たせてくれます。たとえば
世界史とアメリカ映画界アカデミー賞の関わりや、音楽と心理学では
モーツワルトとサリエリの関係性をジョンレノンとポールマッカートニーの
のそれと比較したり、レオナルドダビンチは心理学が得意だった、数学は
文学なしには成り立たない、など独特なテーマと切り口で講義はいつも
盛況で、学生たちも色々とオリジナリティある研究課題を見つけ期ごとの
論文に注力していました。欧米の高校生と日本の高校生はそれ程、意識や
考え方の成熟度は変わりませんが、この「一般教養課程」から若者の
素養に大きな違いが表れるようです。普段はMTVしか見ない様な若者が
ファジル・サイのブラックアースの楽曲について何十枚も論文を書き
倉庫街のレンガ壁に落書きしていた若者がピカソのゲルニカが如何に
政治的テーマを内包しているかを徹底的に調べたりします。我々日本人
よりも、安藤広重と葛飾北斎の版画の特徴について体系的に理解し違いに
ついて議論したりします。多くの芸術家が日本の伝統工芸や美術から
影響を受けたと云って我々は無邪気に喜びますが、それは沢山のエッセンスの
ほんの一部であり、「ヒントを得た」の様なレベルから「学術的に分析した」
レベルまでこの一般教養を通じて文化の源泉まで旅をすることなのです。
芸術とは人が人として心豊かに生きる為の源泉であり活動であることです。
皆様にとっても馴染みのある音楽鑑賞・映画鑑賞・
読書にはじまり表現活動としての音楽演奏、
絵画デッサン、陶芸、詩、もしかしたら
インスタグラムに日常の風景や思いを
ポストする事も表現活動かもしれません。
更にはYOUTUBEでの動画配信やガーデニング、
DIYに至るまでも多岐に渡って自己表現と云える
のではないでしょうか。日本が世界に発信する
様ような文化、例えばアニメーションや漫画、
茶道、華道、書道、食も商業的な部分を除けば、
海外の文化人をうならせる芸術と云えます。
しかしながら日本の「リベラルアーツ」と
欧米諸国のそれの違いは、欧米諸国は
横断的学問であるのに対して日本は一つの
分野として学問である点です。
そして致命的ですが日本は若者の大学進学率が
高い割には、芸術を学問として修学を必須化
していない事です。
もちろん海外でも選択制の大学もありますが、
日本では芸術を専門的な学問として、
一般教養から外してしまっている事です。
そして芸術が全世代に人の生き方を豊かに
する必要不可欠な要素だという認識や、
存在すらしない教育が一般的です。
反論があるかもしれませんが、
この状況が示すデータを調べてみました。
各国の国の文化に対する予算と民間の寄付を
比較した物ですが。
日本は国家予算から 1,032億円(予算比率0.11%)
日本の民間からの寄付6,300億円(GDP比率0.13%)
アメリカは国家予算から806億(予算比率0.03%)
アメリカ民間からの寄付20兆4000億円(GDP比率1.67%)
イギリスは国家予算から 1,686億円(予算比率0.20%)
イギリス民間からの寄付1兆6,300億円(GDP比率0.73%)
その他、ドイツ、フランスも文化への経済支援は非常に多い。
芸術ではなく文化事業全般なので余りの差に危機感すら
感じてしまいますが、ひと昔前に日本が諸外国から
「エコノミックアニマル」と揶揄されていた通り、
お世辞にも先進国とは言えない水準です。
これが日本の都市の景観と欧米の街並みの差であり
多くの一般的な建築物や住宅外観・内装の仕上がり
にも反映されているのです。
「洗練とは教養」この一言に尽きます。
これは単純に日本と諸外国の比較の話ではなく、
現在人類が直面している大きな危機(感染症問題)
において、感染症拡大予防措置の一環として
各国がとっている外出自粛やロックダウンに
不安を感じる我々が、この見えないウイルスの
パンデミックにより、この先の予断を許さない
状況と暗雲とした不安感を抱えて過ごす日々を
身体の健康状態を良好に保つことと同じく
精神面での健康状態を保つためには、
やはり芸術や文化の素養は必要不可欠ではないでしょうか、
特に今、学校や友達と時間を過ごす事を制限されている
若い世代にとって、この芸術を源泉とする活動は心の
平穏と希望の灯となるのではないかと思うのです。
長々とお付き合いありがとうございます。
外出自粛で家での肩身が狭い山田がお送りしました
そんな私が八ヶ岳山麓での生活の日々をインスタグラムで
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投稿者プロフィール
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10年前に東京から八ヶ岳に移住してきた、三人娘の父。
山の中のギャラリーを運営中。
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