市街化区域のなかには、さらに細かく用途制限地域が定められています。
これはどういうものかというと、その土地の用途の混在を防ぐ目的で、都市計画法によって大きく分けて3つに大別されています。
その3つとは、以下の
- 住居系
- 商業系
- 工業系
に分けられています。
では一体この用途制限地域、なにが制限されるのかというと、建築できる建物の用途が規制されています。
建築できる建物に制限がかかってしまうということは、つまり売買においてその対象となる物件がどんな制限を受けるのかを知っておかないと、後々になってトラブルが発生する可能性があります。
例えば、建て替えを前提としている人に対して物件を売却したが、用途制限があるためにその目的が果たせなかった場合、不動産には固定資産税といったランニングコストも発生しますから、完全に不良債権化してしまいます。
もちろん仲介業者がそのような事態が起きないようにケアを行うべきですが、売買の当事者本人がある程度知っているだけでも双方が安心できますし、売り主側がこうした対象物件に対する細かい知識を持っていることで一目置かれて信頼関係を築くことができ、結果的に売買がスムーズに進むこととなるでしょう。
また、売買以外であっても自分が住んでいる地域がどんな制限があるのかを知っておくと、普段から広い視野を持って生活することができます。
ぜひ用途地域の制限については知識としてある程度身につけておき、売買目的の不動産物件の情報を確認する際に目を通すようにしましょう。
用途制限地域は13種類ある?
平成30年4月に田園住居地域が加わり、全部で13種類の用途制限地域が存在します。
住居系 | 第1種低層住居専用地域 |
---|---|
第2種低層住居専用地域 | |
第1種中高層住居専用地域 | |
第2種中高層住居専用地域 | |
第1種住居地域 | |
第2種住居地域 | |
準住居地域 | |
田園住居地域 | |
商業系 | 近隣商業地域 |
商業地域 | |
工業系 | 準工業地域 |
工業地域 | |
工業専用地域 |
全てを見ると、混乱してしまいそうな一覧ですが、大きく分けると住居系と商業系と工業系の3つがあるということだけでも理解できていれば問題ありません。
また、用途制限地域についての考え方は、制限が厳しいか、それとも緩いかという基準で判断するとイメージが湧きやすくなります
もっとも規制の厳しい地域は住居系の第1種低層住居専用地域、逆に規制の緩い地域としては商業地域や準工業地帯といったものがあると思って良いでしょう。
それではもう少し細かく、それぞれ各用途制限地域の特性を見ていきましょう。
住居系の用途地域
規制のもっとも厳しい、第1種低層住居専用地域や、第2種低層住居専用地域などがあります。
この地域は閑静な住宅街をイメージしていただくと、分かりやすいと思います。
ただ、この地域は住居環境を優先するため規制が厳しく、建築できる建物の高さに制限があったり、店舗の建築が限られていたりと、静かに過ごしたい人には向いている地域といえるでしょう。
近年では駅や店舗が自宅から近い、利便性の高い地域の人気が高くなり、こうした昔からの閑静な住宅街では空き家が目立つようになってきました
第1種、第2種中高層住居専用地域は、低層の住居専用地域と違って、3階建ての戸建てや、高層マンションも建築が可能であり、また、飲食店なども混在できる地域です。
ただ、一定時間以上は日照時間を確保するために、日影規制というものがありますので、高層住居ならなんでも建てられるというわけではありません。
さらに第1種や第2種の住居地域になりますと、オフィスビルやホテルなどの建築も可能となってきます。
こちらにおいても、前出の日影規制が存在します。
平成30年4月にできた住居系の用途制限地域である田園住居地域は、農業の利便と低層住宅の良好な住環境を保護する目的として規制があります。
低層住居専用地域に加えて、農業用の施設が建築可能になったものと考えて良いでしょう。
準住居地域については、住居系の用途制限地域の中ではもっとも規制が緩い地域です。
住居との調和を図りながら、小規模な工場なども認められます。
騒音などの問題は発生しやすいですが利便性は高く、建築時に防音対策などをしっかり行えば、人によっては快適な居住を実現することも可能です。
商業系の用途地域
商業系の用途地域には、近隣商業地域と商業地域の2種類があります。
前者の近隣商業地域では、有害な物質を扱う工場など、リスクの高いものや、治安の悪化に影響のあるキャバレーやナイトクラブなどを除いてさまざまな目的の建物の建築が認められています。
この近隣商業地域では近隣住民に対しての利便性を増進する地域ですから、人によっては人気があります。
商業地域は、近隣商業地域に加えて風俗店やデパートなどを建築することができます。
工業系の用途地域
工業系には準工業地域、工業地域、工業専用地域の3種類があり、すべてにおいて工場の建築を想定した地域となっています。
準工業地域については、基本的に工場ならどのようなものでも建築が可能ですが、危険性の高いものは建てることができません。
また、一般的な住居や巨大なショッピングモールなども建てられるため、意外とファミリー向けの地域でもあります。
工業地帯は、映画館などは建てることができませんが、準工業地域に似通っており、また、海沿いに多く指定される地域ですので、最近のタワーマンション人気のエリアにもなっています。
最後に工業専用地域ですが、原則、住居が建てられない唯一の用途制限地域になっています。
ここは完全に工業専用地域となっていますので、工場ならほぼ全て建築が可能です。
工業用の施設しか建てられないため、売買においては広大な敷地を法人間で取引することが多くなります。
そのためこのエリアについてはあまり考える必要はありません。
用途制限地域の種類が変わることがある?
実はこの13種類の用途制限地域は、5年ごとに見直しされることがあり、昔取得した物件のときよりも、売却することには用途制限が変わって規制が厳しくなっていたという話は結構あります。
例えば、物件を取得した時は会社の事務所として駐車場を含めて広い敷地を購入したが、しばらくその物件を使わなくなり、新たに営業用倉庫にしようと思って調べたら用途制限が見直されて規制が厳しくなっていたために、倉庫業の許可が下りないといったケースがありました。
この辺りは完全に予想することは不可能ですので、もし物件を売却する場合にはその都度、現状の用途がどうなっているのかを確認して、立て替えるとしたらざっくりどんな制限があるのかを知っていると良いです。
白地地域ってなに?
都市計画区域、準都市計画区域内で、用途地域が指定されていない地域を白地地域といいます。
この白地地域では、従来は建築物の用途規制がありませんでしたが、都市計画法が改正されたことによって白地地域のなかに特定用途制限地域が定められることになり、地方公共団体によって建築規制を実施することができます。
この場合には細かい建築規制となるため、より詳細に確認しておいたほうが良いでしょう。
用途制限地域とは? 13の種類と法規制についてのまとめ
用途制限地域には大きく分けて3つの種類、住居系、商業系、工業系があります。
その中でも細かく13種類に分けられていますが、その分けられている用途はそれぞれに規制がどれくらい厳しいかというイメージが湧いていれば、不動産の売買においても話し合いがスムーズに進みます。
なかでも、古い物件を持っていてそれを売却したいという場合ですと、用途制限が見直されてより制限が厳しくなっている可能性もあります。
ですから、皮算用して自分の中だけで決めつけるのではなく、細かく調べたり、信頼できる業者と相談したり、どう進めるかを打ち合わせていく必要があります。
とくに個人物件の売買で多く取り扱われる住居系の用途制限地域については、13種類の用途制限地域のなかでもとくに規制が厳しいものが多く、注意する必要があるでしょう。
13種類すべての特徴を覚える必要はありませんが、前述の大きく分けた3種類程度は存在するということは頭に入れておいたほうがスムーズです。
極論、市街化区域には用途制限地域というものがある。ということを知っておくだけでも仲介業者との話の中で理解が深まります。
自分の土地だからなんでも自由にできるというわけではなく、こうした知識をもとにどのような売買をしていくかを計画していきましょう。
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この記事の著者
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建築・不動産が好きなファイナンシャル・プランナー。行政書士。元不動産営業マン。
神奈川県横浜市出身
40代既婚
人生の中で大きい取引になる不動産。
その不動産の取引に関する基礎的な知識、不安の解決、ノウハウなど、みなさまに分かりやすくお伝えします。
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