現況有姿とは?契約前に知っておくべき「そのまま引き渡し」の本当の意味

不動産売却のトラブル

ここでは「現況有姿(げんきょうゆうし)」について、
不動産売買の実務・契約上の意味・リスクと対策まで、実際に現場で役立つレベルで詳しく解説します。

現況有姿=そのままの状態で引き渡す契約

現況有姿とは、「現在のままの状態で物件を引き渡します」という売買契約の条件です。
クロスの汚れ、畳の劣化、壊れかけのポストなど、売主が補修や清掃をせず、現状のままで買主が了承する契約となります。

間違っても、残置物もそのままで良い。ということではないので、注意してくださいね。

「契約不適合責任」とは別問題

よくある誤解が「現況有姿=不具合があっても責任を問えない」ですが、それは間違いです。
現況有姿とはあくまで“見た目の劣化や経年変化”を含めて引き渡すというだけで、
目に見えない重大な欠陥(雨漏り・シロアリ・配管の破損など)については、売主が契約不適合責任を負う可能性があります。

✅ 例)ボイラーの故障はどうなる?

契約時には動作していたボイラーが、決済後に壊れていた場合、それが経年劣化であれば現況有姿として問題なし。
しかし、購入前から不具合を把握していた、または説明がなかった場合には、売主に責任が問われる可能性があります

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今村

前と後で、どうだったのかをしっかりと把握することです。契約と決済の期間が長くなればなるほど、トラブルになる可能性が増えるので、なるべく契約決済は同時に行いたくなりますね。

現況有姿+契約不適合責任免責=売主の責任は原則ゼロ

最近の中古物件では「契約不適合責任免責」の特約を加えたうえで現況有姿とする契約が増えています。
この場合、構造上の欠陥があっても原則として売主の責任は発生しません。

ただし、以下のケースでは免責でも責任が問われることがあります:

  • 売主が知っていた不具合を説明していなかった(=告知義務違反)
  • 売主が宅建業者である(=宅建業法によって制限あり)
  • 売主が法人で買主が個人の場合(=消費者契約法により無効となる可能性)

トラブル回避のためにやるべきこと

  • 契約書の条文を必ず確認する(「免責あり」と明記されているか)
  • 設備の動作確認を事前に行う(通電・通水テスト)
  • インスペクション(住宅診断)を利用する
  • 残置物の処理について明確にリスト化する

現状有姿特約と契約不適合責任の関係をめぐる判例まとめ

現状有姿での取引であっても、すべての不具合について売主の責任が免除されるとは限りません。
以下は、実際に裁判で争われた3つの事例です。

神戸地裁 平成11年7月30日判決

「コウモリが住んでいたら、現状有姿でもNG?」

阪神淡路大震災の影響を受けたエリアにある中古住宅の売買契約で、
「現状有姿で引き渡す」ことに双方合意していました。
しかし、引き渡し後に多数のコウモリが天井裏に棲みついていたことが発覚。

裁判所は、「コウモリの棲息は通常の居住に著しく支障をきたす不具合であり、契約不適合にあたる」と判断。
結果として、現状有姿の特約があっても、売主は責任を免れないとされました。

東京地裁 平成18年1月20日判決

「築21年でもシロアリはアウト」な理由とは?

築21年の中古住宅を「現状有姿」で購入した買主が、
引き渡し後にシロアリによる土台の損傷を発見したケース。

売主側は「築古だし現状有姿だから免責」と主張しましたが、
裁判所は、「構造耐力に関わる重大な不具合があり、現状有姿でも瑕疵といえる」と認定。
結果、売主の契約不適合責任(当時の瑕疵担保責任)が認められました。

東京地裁 平成26年7月16日判決

「現状有姿でも、見えない不具合には注意」

現状有姿で取引された建物について、
引き渡し後に漏水などの不具合が見つかり、買主が売主の責任を追及した事例。

裁判所は、以下のように判断しました:

  • 外から見て明らかな不具合は、買主が了承済みなので責任は問えない

  • しかし、内覧でもわからなかったような瑕疵については、売主に責任がある

つまり、現状有姿の合意があっても、見えない部分まで免責されるわけではないという結論です。

裁判例から学べること

  • 現状有姿=売主責任ゼロ、ではない

  • 重大な構造不良や衛生的に問題のある状態は契約不適合と認定されうる

  • 内覧でも分からない不具合は売主が責任を問われる可能性あり

まとめ:現況有姿とは「納得して買う」契約

現況有姿での不動産購入は、価格が安く抑えられる反面、トラブルのリスクも伴います。
しかし、設備のチェック・契約書の確認・インスペクションの活用でリスクは大きく減らせます。

「知らなかった」では済まされないのが不動産契約。
現況有姿=そのままでOK、ではなく、「自分で納得したうえで契約する」ことが最も大切です。

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今村

いずれにしても、しっかりと理解し、しっかりと契約すること。不動産会社も説明義務があります。お互いが納得していれば、いざ不具合が見つかったとしても裁判沙汰になることもありません。

この記事の著者

宅地建物取引士:今村 崇一
宅地建物取引士:今村 崇一
資格:宅地建物取引士
不動産会社に10年を超えて在籍し、Webの業務をこなしながら宅建の資格を取得。勤務中に色々なお客様の悩みや喜びの気持ちに接して来た経験を活かして、不動産売却(別荘売却)に少しでもお力になれるよう協力します。
売却するということは、お客様の目に留まる集客サイトが必要です。
このサイトに物件を掲載することが売却への早道になるよう努力し続けます。
ぜひ「いなかも家探し」に掲載してと不動産会社にお願いしましょう。
https://resort-bukken.com/

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