都市の喧騒から離れ、静かな住環境を求めて不動産情報を検索していると、突如目に飛び込んでくる「再建築不可物件」の表示。
その価格は一般的な物件と比べて魅力的に感じられることが多いですが、この「再建築不可」という言葉の背後には、何が隠されているのでしょうか?
買っても大丈夫なのでしょうか?購入の前に知っておきたい真実を、深堀りしていきます。
目次
再建築不可物件の定義
再建築不可物件とは、名前の通り、現在の建物を取り壊した後に新しい建物を建てることが法律上許されない土地を指します。
これは、都市計画法や建築基準法などの法的な制約によるもので、特に都市計画区域や準都市計画区域に多く見られる現象です。
なぜ再建築不可物件が存在するのか
- 接道義務の不履行
建築基準法には「接道義務」という規定があり、新しい建物を建てるためには、一定の幅を持つ道路に一定の長さで接している必要があります。これは緊急車両のアクセスを保証するためのルールです。 - 法律の変遷と土地の歴史
現行の法律が制定される以前に分譲された土地や、昔の法律に基づいて建てられた建物は、現在の法律と合致しない場合があります。これが再建築不可の一因となっています
再建築不可物件の具体例
- 道路との接触がない土地
建物の敷地が公道や指定の道路と一切接触していない場合。 - 接触幅が不足している土地
建築基準法上の道路には接触しているものの、その接触幅が法律で定められた最小限度に満たない場合。 - 指定された道路との接触がない土地
敷地は道路と接触しているものの、その道路が建築基準法に定められたものでない、例えば私道のみと接触している場合。
いずれも都市計画法と建築基準法の接道義務として、建物の敷地が、幅員4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していることが求められます。
この接道義務は、緊急車両がスムーズにアクセスできることを保証するためのルールなのです。緊急車両とは、救急車や消防車、パトカーなど、人命救助や火災、事故など緊急事態に対応する車両です。
なぜ再建築不可物件というカテゴリが存在するのか?
再建築不可物件という特異な物件は、過去の法律の制定時期や都市の成長過程に密接に関連しています。
ここでは、再建築不可物件がどのようにして生まれ、都市部では特に多く存在するのか、その背景を詳しく探っていきます。
- 建築基準法:法律の制定時期
建築基準法が制定されたのは昭和25年(1950年)であり、それ以前に建てられた物件には、現代の接道義務を果たしていないものが存在します。さらに、都市計画法は昭和43年(1968年)に制定され、それ以前の敷地区分に基づいて建物が建てられていたケースも存在します。 - 都市計画法:都市計画区域の変化
昭和43年(1968年)に制定されたこの法律は、都市計画区域や準都市計画区域を定めます。この法律制定以前に建てられ、後に都市計画区域等の変更によって接道義務を果たせなくなった物件も再建築不可の対象となります。
都市の拡張や変化に伴い、都市計画区域の指定が変わることがあります。
実例: 東京23区の再建築不可物件
東京23区は都市計画区域に定められており、一見すると近代的な都市像を持っていますが、再建築不可物件が意外と多く存在します。
具体的な統計データを以下に示します。
項目 | 数量 | 割合 |
---|---|---|
東京23区の住宅数 | 490万1200戸 | – |
幅員2m未満の道路に接している住宅数 | 18万2700戸 | 約3.7% |
敷地が道路に接していない住宅数 | 5万9900戸 | 約1.2% |
再建築不可と疑われる住宅数 | 24万2600戸 | 約4.9% |
データ出典: 総務省平成30年住宅・土地統計調査
注: 「再建築不可と疑われる住宅数」には42条2項道路(特定行政庁が指定する「みなし道路」)に接しているケースも含まれるため、すべてが再建築不可ではない。
再建築不可物件は、昔の法律や都市の成長過程、さらに都市計画の変動により発生しています。
特に東京23区のような大都市では、古い法律や土地の歴史に由来する物件が多く存在することが確認できました。
再建築不可物件を取得する際や、既に所有している場合には、上記の背景を理解し、適切な判断や対応を行う必要があります。
再建築不可物件を購入するメリットとは?
再建築不可物件は、価格が安い、固定資産税や都市計画税が安い、隣地の所有者であれば敷地を広げることができるなど、購入者や土地所有者にとってさまざまなメリットが存在します。
近年、東京23区内での再建築不可物件の購入事例が増加しています。これは、物件価格の上昇や土地の狭さを感じる中で、再建築不可物件が提供するコストパフォーマンスの良さや敷地拡張のチャンスを求める人々が増えているからです。
- 価格が安い
- 再建築不可物件は、一般的な物件に比べて価格が安い。具体的には、近隣の同等物件と比較して約1割〜5割が相場とされています。
- 予想相場の幅は、所有者の資金需要や売却タイミングによって変動します。
- 固定資産税や都市計画税が安い
- 固定資産税は物件の評価額に基づいて計算されるため、再建築不可物件の評価額が低いことから税額も低くなります。
- 固定資産税額の計算式: 固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
- 隣地の所有者であれば敷地を広げられる
- 再建築不可物件の隣地を所有している人や、その土地に住んでいる人にとって、再建築不可物件は敷地拡張のチャンスとなる。
再建築不可物件は、一見デメリットが多いように思えるかもしれませんが、実は購入者や土地所有者にとって大きなメリットが潜んでいます。
安い購入価格、税額の軽減、敷地拡張のチャンスなど、再建築不可物件を購入する際のメリットをしっかりと理解して、最適な物件選びを心がけましょう。
既に隣接する土地を所有している人にとって、再建築不可物件は隣地との統合や拡張の大きなチャンスとなる場合があります。これにより、より広い敷地を持つことができるようになります。都心ではなかなか難しいですが。
再建築不可物件を購入するデメリットとは?
再建築不可物件を購入する際には多くのデメリットが存在します。
それらのリスクを十分に理解し、適切な対応策をとることで、価格面でのメリットを活かすことも考えられます。
- 建て替えができない:
- 再建築不可物件は建築基準法の接道義務を満たしていないため、建て替えや増築・改築はできない。
- 土地が狭いことが多いため、場合によっては地質調査が困難。
- 銀行系の住宅ローンが組めないことも(資産価値が低い):
- 再建築不可物件の担保価値は低く、多くの金融機関での住宅ローンの取り扱いがない。
- 買い手が見つかりにくい:
- 建て替えの制限や住宅ローンの取り扱いがないため、買い手の選択肢が限定される。
※上記のデータは、各都道府県の建築基準法や、日本の主要な銀行や金融機関の住宅ローンの取扱情報を基にしています。
再建築不可物件を購入実例:
- Aさんのケース:Aさんは再建築不可物件を購入しました。価格面でのメリットを活かして、既存の建物のリフォームに力を入れました。しかし、後に売却を希望した際、買い手が見つかりにくく、低価格での売却を余儀なくされました。
- Bさんのケース: Bさんも再建築不可物件を購入しましたが、建て替えができない点を理解しており、長期的に自身で使用する目的で購入しました。耐震補強やリフォームを行い、快適な生活を送っています。
- Cさんのケース:Cさんは数年前に再建築不可物件を購入しました。価格が安かったため購入を決意したものの、後に大規模なリフォームを行いたいと思った際に建築申請ができず、希望するリフォームを諦める事態となりました。
再建築不可物件を購入する際のデメリットは多岐にわたります。
建て替えができないことが最大のデメリットと言えるでしょう。
例えば、日本は多くの台風や地震が発生する国です。それに伴う火災被害も再建築不可物件では、損害後の再建が原則できないため、将来的なリスクが高まります。
一部の損壊であれば、リフォームという形で修繕は可能の場合はあります。
しかし、これらのデメリットを十分に理解し、目的や期待に合わせた選択をすることで、価格面でのメリットを最大限に活かすことが可能です。
購入を検討する際は、十分な情報収集と専門家の意見を取り入れることが重要です。
突然の災害により完全に失うことを考えると、必ず火災保険には入っておきたいですね。
再建築不可物件のリフォーム:どこまで可能か?
再建築不可物件において、リフォームは可能であり、多くのオーナーがこれを前提に購入を検討しています。
しかし、すべてのリフォーム内容が認められるわけではなく、建築確認検査が不要な範囲の工事に限られることを理解することが重要です。
どのようなリフォームが可能か?
- 建築確認検査が不要な範囲:
- 4号建築物:2階建て以下、延床面積が500m2以下、建物の高さ13m以下、軒の高さ9m以下、木造建築物。
- 4号建築物において、増改築を行わない場合。この範囲のリフォームであれば、許可を受けずに行うことができる。
- 具体的には、水回りのリニューアル、壁や床の張り替え、10平米以下の増築、そして主要な構造部分の半分未満の修繕などがこれに該当する。
- 大規模な修繕や増築に関して:
- これらは、建築確認検査が必要となるため、再建築不可物件では通常は許可されない。
- そのため、こうした大幅なリフォームの計画を持っている場合は、事前の十分な調査と専門家の相談が欠かせません。
建築確認検査とは?
- 建築確認検査は、建物の建築や大規模な修繕時に行われるもので、都道府県や市などの建築確認検査機関によって確認を受ける手続きです。
- 主な目的は、設計や敷地の使い方が建築基準法などに適合しているかを確認することです。
再建築不可物件のリフォームに関して、計画を進める前に、建築確認検査の必要性や制約を正確に理解し、専門家と相談することが重要です。
再建築不可物件を購入する際には、これらの情報をしっかりと把握し、長期的な住居計画を立てることが求められます。
購入を検討する際のチェックポイント
再建築不可物件の購入を検討するとき、注意しなければならないポイントがあります。
再建築不可の具体的な理由の確認方法
管轄の市町村役所で、物件が再建築不可である理由や、再建築が許可される条件などを確認することが必要です。
物件の詳細を役所で調査する際、以下の書類が必要です。
- 登記事項証明書
- 公図
- 建物図面
- 地積測量図
再建築不可物件のインフラ状況、建物の状態をしっかりとチェックする
- インフラの確認
- 電気、ガス、水道などの基本的なライフラインは通っているのか確認する。
- 特に土地が他の物件に囲まれている場合、それらの配線や配管がどのルートを通っているのかを詳しく調査する。
- 雨水排水の状況
- 建物の雨樋からどのように雨水が排水されているかを確認する。
- 単に地面に流出しているだけであれば、基礎への悪影響が心配されます。適切な下水の流れや排水設備の有無をチェックする。
- 日当たりと風通しのチェック
- 通りに面していない物件は、周りの建物によって日当たりや風通しが悪くなることが多い。
- それにより湿気がこもりやすく、外壁も乾きにくくなる。これは、将来のメンテナンスコストが増加するリスクとなります。
金融機関からの融資の取り扱い
再建築不可物件は、土地の活用可能性の制限や住宅利用のリスクなどから資産価値が相対的に低下していると認識されることが多いです。
このような物件は、資産としての担保価値が低いと判断されることが一般的であり、その結果として一部の金融機関では融資の対象として扱わない場合があります。
購入を検討する際に、売買契約を結ぶ前に金融機関での融資の事前審査を行わなければ、後に融資の審査が通らないリスクが生じます。
その結果、購入者が契約を破棄することになると、手付金を失うことになり、不必要な損失を被ることとなるでしょう。
したがって、再建築不可物件を購入の際は、適切な金融機関での融資の可否を確認する事前審査を必ず行い、安全な購入手続きを進めることを強く推奨します。
再建築不可物件購入時の“隣地問題”への対応: 境界線と通行承諾書の確認
- 築年数が経過した物件における境界問題
- 40~50年以上経過した物件では、初期の境界確定技術の未熟さや境界杭のずれのため、正確な境界が不明確となるケースが多いです。
- 曖昧な境界線での取引は、隣地の一部を誤って売買してしまうリスクが存在し、これが原因での隣地トラブルが増加しています。
- 通行承諾書の重要性
- 日本の不動産データベースによると、再建築不可物件の約30%は道路に直接面していない土地であり、その場合、隣地を通って自らの土地へアクセスする必要が出てくる。
- このような土地の取引では、隣地の通行承諾書がないと、後日、通行に関するトラブルが発生する可能性が高い。
- 実例:
東京都内のSさんは、再建築不可物件を購入した後、通行承諾書を取得していなかったため、隣地所有者との間で通行に関するトラブルに巻き込まれました。この問題は、膨大な時間とコストをかけて解決されましたが、最初から通行承諾書を取得していれば、このようなトラブルは回避できたでしょう。
隣地との関係性を明確にし、通行承諾書の取得や境界線の確認をしっかり行うことで、将来的なトラブルやリスクを大きく減少させることができます。不動産購入時の注意点として、これらの確認は絶対に欠かせません。
再建築不可物件の扱いを得意としている建築家や施工会社、不動産会社と物件の調査することが望ましいと思います。経験豊富な専門家は、見落としがちな問題点やその解決策を指摘してくれることもあるでしょう。
再建築を可能にするための方法とステップ
再建築不可とされる物件でも、適切なアプローチを取ることで、再建築可能な状態に変化させることができます。
以下に、具体的な方法とその手順を説明します。
1. 隣接地を購入または借りる:
再建築を可能にする最も直接的な方法は、隣接地を購入し、物件の接道条件を改善することです。これにより、接道義務を満たすことができます。
ポイント: 隣接する土地が市場に出ているか確認し、条件に合致する場合は取得を検討します。また、一部の土地を借り入れる方法も考慮に入れることができます。
2. セットバックを実施:
敷地の一部を後退させ、道路幅を確保する方法です。特に前面道路の幅が4m未満の場合、セットバックをし、道路幅を4m以上にすることで再建築条件を満たすことが可能となります。
ポイント: セットバックの範囲や計画については、地域や条例に応じて調整が必要です。
3. 建築基準法第43条の但し書き道路許可を取得:
例外的に再建築を認める制度です。特定の条件下で申請を行い、認可を受けることで再建築が可能となります。
条件概要:
- 敷地の周囲に広い空き地が存在する。
- 安全性や防火性が都道府県または市町村に認定されている。
- 建築審査会の同意を取得している。
ポイント: 但し書き道路許可の取得は一定の審査が必要であり、必ずしも認可が得られるわけではありません。そのため、他の方法と併せて検討することが望ましいです。
再建築不可物件の有効活用法:4つのスマートな方法
再建築不可物件は一見制約が多いように感じられるかもしれませんが、適切な方法での活用によって十分な価値を生み出すことができます。
再建築不可物件は、その名の通り新しい建築を行うことができませんが、その土地や建物そのものにはまだ価値が残っています。実際、不動産統計データによると、都市部を中心に再建築不可物件の取引は増加傾向にあり、活用法を模索するオーナーが増えています。
- 資材置き場や駐車場への再利用
- 事例: ある工場オーナーは、都市部に位置する再建築不可物件を資材置き場として活用し、物流コストを大幅に削減。
- データ: 近年、商業エリアや大きな道路に面した再建築不可物件は、資材置き場や駐車場としての利用需要が高まっています。
- 住宅や賃貸物件としてのリフォーム
- 事例: 東京都心の再建築不可物件を、リノベーションして賃貸アパートとして運用するオーナーが増えている。
- データ: 都市部の賃料は上昇傾向にあり、リノベーション物件の需要も増加中。
- 民泊としてのリノベーション
- 事例: 京都市内の古い家をリノベーションし、成功して民泊として運営。
- データ: インバウンド観光の増加に伴い、民泊の需要は年々上昇中。
- 駐輪場としての活用
- 事例: 大阪市内の狭小地を再建築不可物件として購入し、駐輪場として月々の収入を得ている。
- データ: 近隣のマンションや駅の影響で、駐輪場の需要は高まっており、再建築不可物件の価格よりも高い利回りを得られる場合がある。
いずれにしても大型物件や広い土地でないと厳しいですが、参考にはなると思います。他にはアートスタジオ、展示スペース、コミュニティスペース、カフェ、貸倉庫、収納スペースなどスペース利用になってしまいますが。
まとめ
再建築不可物件は、建て替えが難しいという特徴があり、初めて聞くとリスクを感じるかもしれません。
しかし、低価格での購入が可能なその特性を活かすことで、賢い投資や利用法が見込めます。
購入を検討する際には、住宅ローンの取り扱いやその他のデメリットを理解した上で、専門家のアドバイスを受けて、最適な選択を行うことが重要です。
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この記事の著者
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資格:宅地建物取引士
不動産会社に10年を超えて在籍し、Webの業務をこなしながら宅建の資格を取得。勤務中に色々なお客様の悩みや喜びの気持ちに接して来た経験を活かして、不動産売却(別荘売却)に少しでもお力になれるよう協力します。
売却するということは、お客様の目に留まる集客サイトが必要です。
このサイトに物件を掲載することが売却への早道になるよう努力し続けます。
ぜひ「いなかも家探し」に掲載してと不動産会社にお願いしましょう。
https://resort-bukken.com/
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