不動産を売却するために仲介業者と媒介契約を結び、目的の不動産を購入したい買い主が現れた場合に、まず取引のスタートとして買付証明書を買い主が渡し、それに対して売り主が売渡承諾書によって回答することになります。
この買付証明書、売渡承諾書に記入する一番の目的は、当事者の売買の意思を明確化することにあります。
ただし、あくまでもこの買付証明、売渡承諾だけでは取引が成立するわけではなく、正式に売買が成立するのは売買契約を結んでからになりますが、最初の売買の意思表示を書面化するわけですから、まさに不動産取引の入り口です。
また、この買付証明書、売渡承諾書を交付することで、他の購入希望者よりも優先して交渉する当事者を確定させる意味合いもあります。
ですから、誠実に交渉を行う上で必要な書類であると考えて良いでしょう。
それでは、買付証明書は主にどのような内容を記入すれば良いのかを解説していきます。
目次
1.購入希望価格
当事者が一番気にしている部分は、やはり物件の価格ですよね。
この項目では買い主が目的の物件に対する購入希望金額を記載します。
買い主側は、この金額だったら購入しても良いという意思表示になり、売り主側もその金額で納得できれば売却を承諾することになりますから、ここでお互いが問題なければ契約まで一気に近づきます。
金額については買い主も売り主も一番気にする部分と言ってもよいですから、食い違いのないように進めていきましょう。
2.支払い方法、支払い時期
この項目は買い主側が買付証明に記載する内容で、支払う方法と支払う時期について決めていきます。
手付金や中間金、残余金をどのようにいつ払うといった細かい部分も細かく伝えることで、売買が成立した場合に当事者がどのように決済していくかのイメージをスムーズにすることができますから、買い主側はあらかじめ予算の中でどのように支払っていくかを考えておく必要があるでしょう。
これに対して売り主側は、その支払う方法や時期について、問題なく承諾できるかどうかを確認しておきましょう。
支払い方法や時期については、トラブルが多く発生する部分でもありますから、お互いによくすり合わせていきましょう。
3.融資を利用するか、利用する場合の利用額等
融資を利用するかどうかについての有無を記載する部分です。
ここでは融資の利用額以外にも、金融機関はどこを使うのか、また、買換特約の有無なども記入しておきます。
この段階ではまだ確実に融資が通るかどうかわかりませんから、もしダメだった場合には取引自体が消滅する可能性がありますから、注意深く確認しておくべきでしょう。
4.引き渡しの状態について
どのような状態で引き渡すかを記入する部分です。ここでは現状有姿で引き渡すのか、それともリフォーム渡しなのかを交渉する部分です。
もしリフォームして引き渡す場合には、売買金額にも反映される余地がありますから、この部分についても買い主側と入念にすり合わせていく必要があります。
例えば、現況有姿(現状有姿)での引き渡しであれば、買い主側は物件を購入後にリフォームの費用がかかる可能性が高いため、売却金額が低めに設定されることもあります。
逆に過去にリフォームした場合や、リフォーム後に引き渡す場合には売買金額にある程度反映されます。
たまに見られるのが、手持ちの資金が全くないので現況有姿(現状有姿)での引き渡ししかできないというケースがあります。
その場合、売り主は足元を見られて安く買い叩かれることもありますから、うまく交渉していく必要が出てくるでしょう。
5.引き渡し時期
目的の物件を引き渡す時期についての項目になります。
売却する物件がすでに誰も住んでおらず、家具なども撤去して即引き渡しが可能であれば良いですが、まだ生活の拠点としている場合もあります。
その場合には一定の猶予期間がなければいけませんから、引き渡しの猶予期間についても記入しておく必要が出てくるでしょう。
引き渡し時期を決める場合にも、無理のないスケジュールかどうかを考えながら記入していきます。
まだ契約段階ではありませんから、引き渡し時期については概算になりますが、大幅に食い違っているとトラブルの原因となりますから、慎重に決めていきましょう。
6.インスペクション実施希望かどうか
インスペクションは、既存住宅状況調査といって、取引の対象となる物件の外見や、目に見えない部分についても専門家が調査して欠陥の場外を把握するためのものです。
買い主側としては、何か特別な理由がない限りはインスペクションを行ってもらったほうが良いですから、実施希望のケースが多いです。
売り主側としても、インスペクションは必ずやっておいがほうが良いという意識を持っておくことが大事です。
自分で把握している欠陥のほかにも、専門家が内部まで細かく調査することによって全く未知の欠陥が見つかることが多いため、もしその欠陥を知らずに取引を行ってしまうと、トラブルに発展する可能性が高いからです。
売却する物件に対して責任感を持って誠実に臨めば、最後までスムーズに取引を終えることができることでしょう。
7.物件の表示
物件の表示では、不動産の情報を記載します。
具体的には、土地の住所、地目、地積。
建物の住所、家屋番号、構造、面積などです。
これらの内容は、登記簿謄本の表題部をもとに記入していきます。
そのまま記入するだけですから、間違えないようにしましょう。
申込証拠金とは?
買い主側が買付証明書によって申し込んでから、売買契約を終えるまでの間は他の購入希望者より優先してもらうための手段として、仲介業者に申込証拠金を支払う場合があります。
これは手付金と似ていますが、違った性質を持っているもので、絶対に支払わなければならないというものでもありません。
手付金の場合は買い主への売渡しを約束する意味合いがありますが、申込証拠金はあくまでも本気で購入を考えているため優先して交渉してほしいという意味合いのものです。
もちろん、交渉が上手くいかなかった場合や、キャンセルになった場合でも申込証拠金は買い主側に必ず返還されます。
また、話が進んで決定的になってきたら、申込証拠金は一度買い主に返還され、改めて手付金を用意するといった流れになることもあります。
申込証拠金を払ってしまったから必ず購入しなければいけないというものではありませんので、手付金との違いをよく把握しておきましょう。
不動産取引における買付証明書のまとめ
買付証明書は交渉のスタート時点で用意すべき書類であり、売買契約とは違い、交渉によってはキャンセルになる可能性がまだ多い状態であることを知っておきましょう。
また、買付証明書は必ず必要な書類ではありませんが、目的の物件を購入したい人は他にも複数存在する可能性が高いですから、本気で購入したいと考えている場合は、物件内覧後にすぐ作成して提出することで、他の購入希望者より優先して交渉に挑みやすくなります。
内容としては主に
- 購入希望価格
- 支払い方法と支払い時期
- 融資利用の有無
- 引き渡しの状態
- 引き渡しの時期
- インスペクション希望の有無
- 物件の表示
となっており、いずれも最初の購入希望時点で売り主側に正確に伝えることで、その後の売買契約の締結、物件の引き渡し、決済まで円滑に進めることができます。
従って買付証明書を記載する目的としては、売り主へ購入希望の意思を伝えるとともに、取引が終わるまでの整理をしておくこととなります。
どの内容も曖昧にせず、書面で明確にした内容を口頭でもしっかり説明できるようになっておくと、スムーズな取引を行うことができます。
また、買付証明書だけではなく、申込証拠金を預けることもあります。
これは買い主側の本気度を示すものとして用意するもので、手付金のように購入を確定づけるものとは違った意味合いになります。
もし交渉がうまくいかず、売買をキャンセルした場合でも、申込証拠金は必ず買い主に戻さなければならないので、覚えておくと良いでしょう。
不動産を購入する場合、もし内覧を終えた後に具体的に交渉を進めたい場合は、ぜひこの買付証明書を使って取引を有利に進めていきましょう。
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この記事の著者
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建築・不動産が好きなファイナンシャル・プランナー。行政書士。元不動産営業マン。
神奈川県横浜市出身
40代既婚
人生の中で大きい取引になる不動産。
その不動産の取引に関する基礎的な知識、不安の解決、ノウハウなど、みなさまに分かりやすくお伝えします。
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