不動産の価値を算出する場合における重要な項目として、「道路」があります。
この不動産に接する道路については、金融機関も担保評価を行う際にもかなり重視されています。
その理由は、法律によって接道義務が定められており、「敷地に対して幅員4メートル以上の建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならない」という規定があるからです。
この、敷地の道路付けが良いかどうかは思っているよりもとても重要な項目で、それを知らない人は建物や土地の状態だけを見て判断しがちですが、例えば将来的な売却を考えて購入する場合にはもちろんのこと、永住することを考えていたとしても、相続が発生して次の代で売却を検討したときに思ったよりスムーズに売れなかった。売れたとしても大した金額にならなかったなど、接道状態によって大きく影響してしまいます。
そのほかにも、例えば接道義務を果たしていない古い家を購入したが、再建築が不可だった場合など、道路付けの悪い物件を購入してしまうと、必ずあとになってストレスとなるような弊害が出てきます。
ですから、物件を見るときは建物や土地はもちろんのこと、道路付けの状況も把握できるようにある程度の知識を身につけておくことで、将来発生する弊害を減らすことができます。
目次
建築基準法での道路には、大きく分けて7つの種類がある?
接道義務に定める道路は、不動産の価値を決めるため、建築基準法で定められているどの道路なのかを知っておくと、後々有利になります。
①道路法で定められている道路
国道や都道府県道、市区町村道で、幅員4メートル以上の道路、一般的には公道と呼ばれる道路となり、役所が管理しています。
②2号道路
都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法などによって築造された道路です。
③既存道路
建築基準法の施行時に、すでに存在した幅員4メートル以上の道路となります。
④計画道路
都市計画法、土地区画整理法などで2年以内に事業が行われるものとして特定行政庁が指定した幅員4メートル以上の道路です。
⑤位置指定道路
宅地造成と並行して、一般人や法人によって造られた一定基準に適合する私道、特定行政庁から位置の指定を受けた幅員4メートル以上の道路です。
⑥2項道路
建築基準法の施行時に、すでに建築物が建ち並んでいた幅員4メートル未満の道路で、特定行政庁が指定したものです。
⑦上記の①~⑥のいずれにも該当しない道路
長年道路として利用されているものであっても、上記の①~⑥のいずれにも該当しないものについては、建築基準法外の道路となります。
したがって、原則は2メートル以上接道していても建築物の建築はできませんが、例外的に接道義務が除外されて建築が可能となる場合があります。
なお、接道の特例許可の要件としては次のものが定められています。
敷地の周りに広い空き地があること
例えば敷地が公園や緑地などに囲まれている場合に該当します。
農道等に接していること
農道等は建築基準法上の道路ではありませんが、道路と同じように扱われるため、特例許可の要件となります。
道路に通じる道に接していること
道路へと通じる道に接している敷地で、その道が避難通行上において安全な場合に特例許可要件となります。
また、接道部分が道路に2メートル以上あるが、路地状部分が2メートル未満の旗竿地(はたざおち)と呼ばれる敷地に関しても、接道義務を果たしていないという判断がなされますが、上記の条件を満たすことによって旗竿地でも救済措置を受けることができます。
そのほかに道路の中で特に注意しなければならないものは?
①~⑤はとくに問題なく、⑦については上記の通り特例許可が認められるケースもありますが、⑥の2項道路については少し注意が必要となっています。
この2項道路が定められている建築基準法第2条2項では、敷地が接している道路の幅員が2メートル未満の場合、道路中心線から2メートル後退した線を道路境界線とみなし、建築しなければならないと定められています。
これはどういうことかといいますと、例えば物件に接道している道路が3メートルだった場合、道路側の敷地1メートルの部分は建築することができず、本来建築できるはずの面積が狭くなってしまうということです。
なお、敷地の後退部分は、みなし道路としてセットバックと呼ばれています。
本来建築できる有効敷地面積が狭くなるわけですから、当然売却する際にも思ったより高く売れなかったというケースが出てきます。
土地や建物の状態だけでなく、道路の接道状態はどうなっているかを気にする人は非常に少ないですが、その不動産の価値の決め手となるうえで、接道状態を把握しておくことはかなり重要です。
ですから、物件を見定めるうえで次の確認は必ず行っておきましょう。
道路状態について確認すべき事項
- 目的の物件に接道している道路は建築基準法上の道路であるかどうかの種別を確認する。
- 国道や都道府県道などの公道であった場合、その名称と認定幅員を確認する。
- 接道している道路が私道であった場合、特定行政庁から位置指定を受けているかどうかの確認をする。
- セットバックが必要だった場合、後退部分がどれくらいになるか、道路中心線が確定しているかどうかの確認。
- 旗竿地だった場合、接道部分と路地状部分の幅員がどれくらいあるかの確認をする。
もし宅建業者に上記の確認をして答えられなかった場合には、必ず調査して回答をもらうようにしておきましょう。
まとめ
不動産の物件を購入するときに見るべき点として、建物の状態や土地状況はもちろんのこと、接道状況についてもかなり重要なポイントとなります。
簡単に挙げると、接道義務を満たしているか。接道している道路の幅員が4メートル未満の場合にはセットバックがどれくらい必要になるか。旗竿地は接道部分と路地状部分の幅員が2メートル以上あるかどうかなど、パッと見で判断できる部分もあります。
また、宅建業者に確認する事項としても、接道している道路が建築基準法上のどの道路に種別されているか、私道などの場合には特定行政庁から位置指定を受けているかどうか、セットバックが必要となる場合に道路の中心線はどこで確定されているかなど、細かく確認しないといけない部分も出てきます。
逆に、こうした知識を備えていないと不良物件を掴まされ、後々になって不都合が出てきてしまうという場合があります。
例えば、道路の接道義務を満たしていない物件を購入した場合、それが再建築不可物件だった場合には売却するにも思ったような価格で売れないどころか、なかなか買い手がつかないという可能性が高いです。
もしそうなれば、次の物件を購入するための資金として、売却資金を充てようと考えていてもそれが叶わなくなってしまいます。
ですから、必ず道路については自分の分かる範囲で確認し、細かい部分については宅建業者に確認。
そしてまだ調査していないようでしたら、調査して回答を貰うようにしましょう。
また、もし接道義務を満たしていない物件であったとしても、条件によっては再建築が認められる場合がありますので、それも含めて宅建業者に確認し、将来的にどのような弊害が出るかを計算したうえで物件の購入を判断してください。
そして、多少金額が高くても、将来のことを考えてできれば道路幅は広く整備されており、敷地の間口が十分に広い物件、いわゆる道路付けの良い物件を手に入れることをお勧めします。
これらを踏まえて、ぜひ物件を購入する際には、建物、土地状況だけではなく、必ず道路付けの状態も含めて判断してください。
この記事の著者
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建築・不動産が好きなファイナンシャル・プランナー。行政書士。元不動産営業マン。
神奈川県横浜市出身
40代既婚
人生の中で大きい取引になる不動産。
その不動産の取引に関する基礎的な知識、不安の解決、ノウハウなど、みなさまに分かりやすくお伝えします。
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