不動産について多少調べたことのある人なら聞いたことはあると思いますが、土地には市街化区域と市街化調整区域という区域分けが存在します。
一見して同じような漢字の羅列で、どんな違いがあるのか分からないという人が多いと思いますが、将来的に建物の建築や売却を考えている場合には、この区域の違いを知っておかないと大きな損失を生むことになりかねません。
市街化区域や市街化調整区域について知る前に、まず都市計画法で定められている区分けがあります。
ここでは細かくは説明しませんが、
- 都市計画区域
- 準都市計画区域
- 都市計画区域外
があり、役所の都市計画課などで都市計画区域かどうかを調べることができ、その都市計画区域内において市街化区域と市街化調整区域、そして非線引き都市計画区域の3つが存在します。
実務上においては単に市街化区域と市街化調整区域を区分けすることを「線引き」と言い、線引きがされていない区域が上述の非線引き都市計画区域になります。
つまり、都市計画内には3つの区域があり、それが次の
- 市街化区域
- 市街化調整区域
- 非線引き都市計画区域
となります。
似たような文字列なので、慣れないと混乱んしますよね
また、なぜ市街化区域や市街化調整区域のような区分けしているのかというと、無秩序に乱開発が行われることを防止し、段階的に道路や下水道の整備をして計画的に市街化していくことを目的としているからです。
資本的にも、道路や下水道の整備は限られた予算から出す必要があるため、行政の予算を効率的に投下することでより良い都市環境を整備する目的もあるわけです。
それぞれの区域によって法規制は異なり、具体的にどのような法規制があるのか、また、どのような要件を満たせば建築が可能なのかなど、実際には個人で調べるのは難しくなってきます。
その場合は、うやむやにせずにできるだけ不動産会社へ相談するようにしましょう。
信頼できる不動産会社であるかどうかがポイントです。
市街化区域とは?
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域、また、おおむね10年以内に優先的、かつ計画的に市街化を図るべき区域 とされています。
つまり、現在は開発されていない平原や山林でも、おおむね10年以内に宅地化して他の区域に優先して市街にする計画があれば、市街化区域として指定することができるものです。
市街化区域は近い将来に市街化が予定される区域ですから、当然土地価格が下落するようなリスクが少ないということになります。
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市街化を抑制するべき区域、つまり市街化区域とは逆で、現在のところ将来的に市街化する予定がない区域となります。
したがって開発行為や建築行為については制限されますが、市街化や建物の建築が完全に禁止されているわけではありません。
また、市街化調整区域の目的は現状維持ということになります。
行政としては市街化調整区域に関しては電気や下水道などのインフラ整備も原則行わないため、このような土地を手に入れてしまうと活用も限られますし、なんと売却できても二束三文にしかならないということも想定されます。
相続で引き継いだというケース以外は、なるべく手元に置きたくない区域の土地です。
非線引き都市計画区域
非線引き都市計画区域がなぜ区分けしないのかの理由の一つとして、現在は地方の中小都市などで人口が減少傾向にあり、規制をしなくても無秩序な市街化が起きる可能性が低いためです。
そのような人口減少が著しい都市では、むしろ都市を活性化させるために市街化を促すため、市街化区域よりも制限を緩くする必要があります。
そのため売買という観点からみると、法律の制限が緩いために、市街化区域よりも自由な建築が可能でありながらも、需要としては下がっていくリスクが高く、もし非線引き都市計画区域の土地を持っている場合には、なるべく手放しておいたほうが将来的にはリスクが低いかもしれません。
一定の要件がそろっていれば開発行為が許可される区域は?
上述の市街化区域、非線引き都市計画区域に加えて、都市計画区域ではない準都市計画区域も要件を満たせば開発行為が許可されます。
具体的には次のとおりです。
区域 | 許可の基準 |
---|---|
市街化区域 | 原則1,000㎡以上の開発行為は都市計画法の許可が必要 |
非線引き都市計画区域 | 原則3,000㎡以上の開発行為は都市計画法の許可が必要 |
準都市計画区域 |
一方で市街化調整区域は、市街化を抑制する地域ですから原則は建築物を建てることができません。
ただし、絶対に建物の建築ができないというわけでもなく、最近では地方自治体の制限緩和も進められているのもあって開発や建築行為が可能な地域が増えつつあります。
とはいっても住宅を建てるためには要件を満たして許可を得るなど、個人にとっては高いハードルがあり、インフラの整備もされていない場合があるため、市街化調整区域の土地を積極的に取得することは避けたほうが無難でしょう。
また、市街化調整区域は固定資産税が安く、都市計画税も課税されません。
これは土地価格や維持費が安いからという理由で購入してしまうリスクもありますから、それぞれの区域の特性をしっかり把握しておくことで損失を防ぐことができます。
かつて日本のバブル期に、とにかく土地さえ持っていれば価格が上がると言われて信じ込み盲目的に購入したものの、バブルが崩壊して現在はその土地を放置し雑草などで荒れ果て、処分に困っているという事例もあります。
土地の処分に困る例としては、原野商法の被害もありますね。
市街化区域と市街化調整区域って?知っておいたほうがいい3つの区域のまとめ
まず、市街化区域と市街化調整区域は、都市計画区域内で線引きされた区分けで、線引きされていない非線引き都市計画区域を含めて3つに区分されています。
まず知っておかなければならないのは、この3つの区域の違いは、開発などの制限が厳しいかどうかになります。
大まかに制限が厳しい順に並べると
「市街化調整区域 > 市街化区域 > 非線引き都市計画区域」と考えて良いでしょう。
では売買を考えた場合に、建築などの制限が緩いほうが良いのかというと、単純な話ではなくてスムーズに売却できる土地かどうかが問題になってきます。
もし将来的に活用したり売却したりすることを考えている場合には、市街化区域を優先的に取得したほうが良いでしょう。
例えば、市街化調整区域は原則として住宅の建築が制限されているため、使い道が非常に限定的になってしまいます。
メリットとしては固定資産税などの税金面が安いことが挙げられ、要件を満たすことで住宅の建築も可能になることはありますが、通常の一般人が活用するにはハードルが高く感じるかもしれません。
ちなみに、一部のリフォームであれば可能ですが、増築、改築を伴う建て直しなどは、建築確認申請をし、許可が必要になってきます。
相続などで手に入ったものの、市街化調整区域であったためどうしていいか分からず放置して雑草が伸び放題で荒れてしまっているケースもたまに見かけます。
ですから、自分で土地を購入検討している場合には、この市街化調整区域は避けたほうが良いでしょう。
また、非線引き都市計画区域については、制限が緩いために自由な建築が可能になるメリットが大きいです。
ただし、もともと非線引きとなっているのはその必要がないからであり、それは人口が減少して都市として衰退しているという可能性があるわけです。
購入してみたは良いが、需要が少ないために売却時には大幅に価格が下落するというリスクもはらんでいます。
そして、逆に都市が活性化した場合でも、市街化区域か市街化調整区域のどちらかに線引きされる可能性があります。
この場合ですと将来的に不安定要素を残すことになりますので、なるべくなら非線引き都市計画区域も入手を避けるべきでしょう。
地方でも主要都市から離れると、非線引き区域が非常に多いです。田舎暮らしを希望されている方は、気にしないのかもしれません
そして市街化区域については、すでに市街化されているか、もしくは現在原野や山林であっても今後10年以内に行政が資本を投下して市街化を活性化させる予定の区域ですから、これから価値が上がる可能性の高い土地になります。
不動産は活用の幅が広いので、絶対にこれが良いとは言い切れませんが、市街化区域の土地であればリスクは低く抑えられることができるでしょう。
今回はややこしい漢字の羅列が多く分かりづらいと思いますが、市街化区域か、市街化調整区域なのか、もしくはそれ以外なのか の3つさえ知っておけば、あとは信頼できる不動産会社と相談すれば良いだけです。
将来的なリスクを抑えるためにも、ぜひ覚えておきましょう。
この記事の著者
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建築・不動産が好きなファイナンシャル・プランナー。行政書士。元不動産営業マン。
神奈川県横浜市出身
40代既婚
人生の中で大きい取引になる不動産。
その不動産の取引に関する基礎的な知識、不安の解決、ノウハウなど、みなさまに分かりやすくお伝えします。
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